はやぶさのエンジンに異常

小惑星イトカワの探査より地球に向かって飛行中の探査機はやぶさ。弾を撃ち込んで破片を回収してくるなどというSFチックな計画は、科学にあまり興味のない方も、ちょっとわくわくしたのではないかと思います。
ひと頃前には破片が取れたとか取れてないとかで騒いでたような記憶がありますが、それはそれで、個人的には帰ってきてからのお楽しみ、という感じでいたのですが、にわかに雲行きが怪しくなってきたようです。なんでも搭載しているイオンエンジンに異常が発生したとか(JAXAのプレスリリース)。
肝心の「中和器の劣化による電圧上昇」というのがよくわかりませんが、調べてみると、今回搭載しているイオンエンジンは、Xeガスを電離させ、電圧をかけて加速させた+イオンを噴射、推力を得るというものらしいです。中和器というのは、そこに電子を放出し、文字通り電気的に中和するようです(そうしないと探査機側が-の電荷を持ってしまう)。そこがどうにかなった模様。
原理として書いてしまえば単純ですが、それを実現することの困難さは推して知るべしでしょう。なにせこのイオンエンジン、格好いい名前とともに製造元がNECというギャップがまた素敵な逸品なのですが、推力はたったの8mN(このあたりはちまっと計算できそうな気もします)。人間につけて歩く速度まで加速するのに2時間はかかる具合です。で、消費電力は350Wと、いささか電気食いなんじゃないかと思ったりするのですが、推進剤の重量あたりの効率が非常にいいらしいです。話を戻すと、推力は8mNしかないわけで、少しずつ少しずつ、月単位の長期間加速し続けるという戦法なので、逆に言うと年単位の長期間動き続ける必要があります。それこそ部分によっては電離したガスにその間さらされ続けるわけで、詳しいことはわかりませんが、想像するだに相当に過酷なのではないかと思います。電離させるには結構な高電圧が必要ですが、それを作る部分も安定して動作しなくてはならないわけです。
さらに蛇足ですが、地上で実験をするにしてもかなり大変だったと思われます。ISASのトピックスには打ち上げ後イオンエンジン始動前にベーキングをしたとありますので、実験でも残存ガスの極めて少ない、かなりの高真空が要求されたと推測されます。真空引き、私自身はやったことないですが、小さいチャンバーでも結構な作業です。それをそこそこ大きい箱で、しかももしかしてXeも排気・・・
結局何が書きたかったのかよくわからなくなってしまいましたが、とにもかくにも、一応既に実験としてはかなりの成果を上げているはやぶさですが、せっかくここまできたのだから、無事地球に戻ってきて欲しいものです。