原発事故と科学者の物言い

地震津波でえらいことになった福島第一原発。極限状態の中、まさに命がけで復旧作業にあたられている関係者の皆様、本当にお疲れ様です。
そんな福島第一原発の状況については、このような場合の常として専門家である大学教授がスタジオで解説を行うなど様々な報道がなされていますが、今回の事故に関する報道について、先日の朝日新聞に、池上彰氏の興味深いコラムが掲載されていました。ざっくり言うと、専門用語の使用や受け手側との知識のギャップが誤解を生みうる、という内容でした。
もちろん報道する側もできるだけわかりやすくしようとしているわけですが、科学に関わる端くれの感覚としても、一般の人にわかりやすく説明するというのは、最も難しい作業の一つです。
例えば原発の周辺地域の土壌から放射性物質が検出されたという話。ヨウ素131は半減期が8日くらいだが、セシウム137は半減期が30年あるので土壌の入れ替えなどが必要になるかもしれない、などと聞いたとしましょう。まあヨウ素131とかセシウム137とか、なんか数字がついてるけれど、怖い放射性物質の名前なんだろうと、で、半減期というのは文字通り取れば半分に減る時間だから、ヨウ素の方は8日で半分になって、セシウムの方は半分になるのに30年もかかるのか、じゃあ全部なくなるのは60年後なんだな、などと考えた時点で、誤解が生じています。
放射性同位体は一定の割合で崩壊していきます。最初の30年で半分になるなら、次の30年では残った半分のその半分が崩壊し、残りは1/4になります。つまり60年で1/4、90年で1/8といった具合に減っていきます。こうした減り方をするということは高校で物理選択だった理系の大学生くらいなら知っていると思いますが、一般的には知らない人がかなり多いのではないでしょうか。というか、放っといて減るの?というのが、その前にきそうです。
今回はたまたま原子力関連でしたが、やはり科学者、研究者というのは、普段から一般の人に向かってわかりやすく語らなければならないなあと強く思う次第です。
加えて、我々の普段の生活がどれだけ原子力の世話になっているのかを、改めて認識する機会ともなりました。関電管内、若狭方面には足を向けて寝られません・・・